陶芸作家・Gakoちゃんインタビュー「Gakoちゃんと干支人形」
「ほっこりとか癒されるとか、どっちかと言ったら自分の生き写しのようなものを作っとる感じよね。」
こう話すのは、Gako factoryの古賀裕子さん。(以下、Gakoちゃん)福岡県大野城市にて陶器のお人形を制作している。
今回話を聞かせてくれるということで、Gakoちゃんのアトリエにやってきた。実はここ、以前アトリエ華もみじがお店を構えていた店舗の2階。
Gakoちゃんと華もみじの関係はとても長く、華もみじが法人としてお店を構える前から今に至るまで、最も近くで見てきた存在の一人かもしれない。
ほっこり干支人形
華もみじにおいて、例年お正月の定番となっている商品が「干支人形つき多肉植物のブリコラージュ」だ。その干支人形こそがGakoちゃん制作のお人形で、ほっこり癒されるとコレクションにしているファンも多い。
2023年の干支は卯(う)。ということで、今回もGakoちゃんに干支人形の制作を依頼させてもらった。
こちら歴代の干支人形たち。今回インタビューのために勢揃いしてくれた。
「たしか早い段階から干支と多肉は一緒にやっていたと思う。遡ったらね、申(さる)や午(うま)、未(ひつじ)もあった。まだひと回りはしていないと思うけど、8年くらいやっているかな。」
写真から干支人形も進化を遂げていることが伝わってくる。例えば申(写真左)など初期の作風が、丑(うし/写真中央)などの最近のものと雰囲気が異なって見えるのは、粘土の違いからだという。
制作初期に使っていた粘土はオーブン粘土。素朴な味わいがあるが、水や紫外線に弱い一面もあり、植物とあわせて飾ることを考えて強度の高い陶器に変えたのだとか。
小森妙華との出逢い
ちょっと話は逸れるが、Gakoちゃんを紹介するには小森妙華(以下、妙華さん)との出逢いなくして語れない。
そもそもふたりの出逢いについては先日のインスタグラムで妙華さんが紹介していたけれど、Gakoちゃんが地元のお祭りで大量に余った金魚を妙華さんに譲ったことからはじまるという、なんともひょんな出逢いだった。
「妙華ちゃんに「これも縁やけん、ごはんでも食べに行きません?」と誘われたものの、綺麗やし話も上手やし、いつ勧誘されるんやろうって内心ずっと思いよった(笑)」
そんな話も今となれば懐かしい思い出。
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二足のわらじ
Gakoちゃんは大学時代に地方で建築を学び、今は実家の家業である工務店で働いている。陶芸は大学のサークルではじめたことがきっかけだったが、卒業後も楽しくて細々と続けていたという。
ふたりが出逢った当時まだ本格的に陶芸をしていなかったGakoちゃんは、妙華さんに誘われるまま飲食店の店先に出店したり、ハンドメイドマーケットで販売したり、植物とコラボレーションをしながら作品を作り続けた。まるで妙華パワーに引っ張られるように、あれよあれよと活動の幅を広げていった。
「私って結構保守的な人間やけん、どっちかっていうと結果が見えてないと動かない人やけんね。でもたぶん、妙華ちゃんの飛躍というか、努力とか変わろうとする姿勢を見て感化されたところはあるよね。追いつけ追い越せではないけれど、あぁなんか変わるって楽しいなって。」
華もみじの卒業生たちをはじめ、Gakoちゃんの作品にはたくさんのファンがつき、今では手が足りなくなるほど注文が絶えないという。
特に年末にかけてのこの時期は毎年大忙し。工務店で働き子育てもしながらの制作活動は、なかなかパワフルでないとこなせないだろう。
「最近は朝の4時半くらいに起きて作ってる。家の小さいキッチンで縮こまって(笑)5時過ぎくらいになってくると鳥が鳴き出すっちゃん。カラスとかスズメとか。」
ひっそりとした朝の静けさの中で、ひとり鳥の鳴き声に身を預けながら制作に打ち込む。その姿を想像しただけで、柔らかくてあたたかな手から生命が誕生するかのような想像が湧いてくる。
命を吹き込む
「一番最後に顔をつける時は、だいたい目、鼻、口、顎、ほっぺ、で終わるっちゃけど、顎つける時に口角がクッと上がるったい。ただ押し出されとるだけなんやけど。そしたらなんかね、「あぁ、命が入った」みたいな感覚になる。」
「作っている間に「かわいくなぁれ〜」とかそんな意識は全くないんよ。でも一番最後に表情をつけた時に、自分がニコッてなるのが一番大きいかな。なんか吹き込めたなぁって。」
「羊は子供が産まれた後に、寝かしつけられた数時間で作っていた記憶がある。干支はね、それを作った年に「あぁ、こういうことがあったな」とかひとつずつ思い出せるのが感慨深いね。」
干支人形を手に取ってくれた皆さんへ
「部屋のどこかに飾っていて、生活している中でその前を通ったときにパッと目がいって「ニコッ」ってなってくれたら嬉しいかな。だから是非ね、目に留まるところに置いてほしいなと思う。」
「多分ね、みんな生活しとったらイライラすることカリカリすること多いっちゃん。うちもそうやけど。でも気が一瞬でも軽くなってくれたらね、それが本望かな。」
Gako factory
暮らしや植物に溶け込む、ほっこり・にょきっとした思わず笑顔になるものたちを。 アトリエ:〒816-0952 福岡県大野城市下大利3-2-22 2F
Instagram:@gakofactory