ハナモミジ

ハナモミジ

【ディプロマ便り】なっちゃんへ繋いだバトン

先日、前編後編にわたって宮崎県の育種家 川越ROKAさん訪問レポートをお届けしましたが、実はもう1か所お邪魔したところがあります。

レポート内でチラッとご紹介しました「フラワーブティック アナーセン」さん(以下、アナーセン)です。

川越ROKAさんのハウスを出て10分ほど。田んぼ道を抜けた先に現れたのは、かわいらしい建物に華やかなガーデン。さわさわと大きな木々が風に揺れて、まるでおとぎの国に降り立った気分になります。

 


 

実はアナーセン、オープン19年目を迎える今年3月に事業承継を行いました。

近年、中小企業や零細企業が経営者の高齢化や後継者不足により廃業に追い込まれるケースが多く見られ、それはいち花屋においても言えること。ですが、そのような世情においてアナーセンはまさに理想的な形でバトンを繋ぐことができました。

アナーセンについて少しご紹介しますと、長年会社勤めであった川口のり子さんが一念発起して2005年3月に宮崎市にオープンした花屋さん。オープンしてから川越ROKAさんが種から育てたビオラと運命的な出逢いを果たし、

“大好きな育種ビオラやパンジーをはじめ宮崎発の素晴らしい花々を全国に発信し、宮崎を花で元気にしたい。日常をほんの少し豊かにできるようなガーデンショップでありたい。”

そんな想いでお店を続けて来られたようです。

そんな美しい宮崎ブランドの花たちを全国に発信してきたアナーセンが新たなステージへ。

川口さんが想いを繋いだ相手は、従業員のなつみさん(以下、なっちゃん)。アトリエ華もみじのディプロマ卒業生でもあります。

川口さんからなっちゃんへ。おふたりに今の胸の内を聞いてみました。

 


 

川口さんの想い

アナーセンが現在の地にお店を移転したのは2015年、川口さんが62歳の時だったと言います。

ーー (川口氏)「私も60歳まではと思って一回お店を継いでくれる人を探したんだけど、アナーセンと言っても土地は借りてるし建物もなかったし。ここに移転したら譲るという形は見えてきたから。」

 

なっちゃんがお店にやって来たのは25歳の時。川口さんと共に、気づけば10年の月日を歩んでいました。

ーー (川口氏)「なっちゃんは真面目。私の元でよく勤まってるよ、10年もね。本当に大変だと思う。自分が離れてみてはじめて分かった。ほぼ私より先に帰ることがなかったので。だからお店が順調に伸びていっても、それは今までの積み重ねのおかげと思って。」

 

オーナーをなっちゃんに引き継いだ今、それまでやりたくても手が行き届かなかったお花の手入れや草取り、剪定などに思う存分打ち込めていると話す川口さん。その表情には一切のかげりもありませんでした。

自分が並々ならぬ愛情を注いできたお店を、家族でもない誰かに託すという選択はなかなかのこと。川口さんのなっちゃんへ対する絶対的な信頼と、お二人の絆の強さが感じられました。

 


 

なっちゃんの想い

ーー (なっちゃん)「お客様に「よく覚悟したね!」って言われるけど、覚悟って変な意味じゃなくてなくてただずっとその延長でいる。だから「よし、やるぞ!」みたいなのはない。」

事業承継については、3年ほど前から事業承継センターの人に間に入ってもらいながら準備を進めてきたと言います。

ーー (よっしー)「なっちゃんがオーナーになって、変わったことはありますか?」

ーー (なっちゃん)「まぁでも川口さんがいるから、分からないことをポンポンと教えてもらえるし、全然。」

ーー (川口氏)「責任が出てきたよね。今までは何かあったら私が責任を持ったけど、最終決定は自分でしないといけないし。仕入れてお金を払うのも自分の責任として払うわけだし。」

ーー (秋田氏)「なっちゃん、この先こうしていきたいっていう夢はある?」

ーー (なっちゃん)「新しいことをしたいとかは特になくて。この空間が好きだから、ここでやっていきたいっていうのはあるんですけど。」

ーー (秋田氏)「どうせなら自分の好きなことが実現できたらいいだろうし。」

ーー (なっちゃん)「でも今好きなことやってるのでいいですよ。私たちは花が好きだけどものすごく花が好きー!というよりは、そのある空間が好きだよねって話をしていて。ここに来る人が癒されるって言ってくれるような場所。そういう場所があんまりないから。大きくしたいとかは全然ない。自分たちがいて気持ちいい空間じゃないと。」

 

なっちゃんの魅力は、誰にも媚びる感じがなく気負わず、常に自然体。自分に偽りのない生き方を貫くその姿勢に、年下ながら感心してしまいました。

地域の人たちとのつながりが何よりも大事な場所であるからこそ、その魅力に引き寄せられる人は多いのではないでしょうか。

 

実は今回同席した小森先生は、華もみじを立ち上げるずっと前からアナーセンのファンだと話していました。

「もともとガーデナーになりたくて、でもなれなくて。川口さんが海外のものを仕入れたり海外の要素を持ってきて、素敵なお庭があってお店があるアナーセンが私の中で最先端だったんだよね。ああいう園芸店をやりたいなって川口さんのブログをよく見ていた。

ずっとアナーセンは憧れていたし、川口さんの地域や業界を広めていきたいという活動の仕方は、華もみじの経営にも活きている。」

 

川口さんやなっちゃん、川越ROKAさんをはじめ、お花を通して繋がった方々とのご縁。それぞれの人生がふとしたきっかけで交わることはやっぱり不思議だけど、出逢ったことで多くの学びを得たり大きな転機を迎えたり…

月並みな言い方だけど、人との出逢いこそ人生をより豊かにしてくれるものなんだな。

(編集部 よっしー)

 

Andersen アナーセン information

田んぼの中の花屋さん。季節の花とともに、猫のにゃー店長が出迎えてくれます。自然あふれる憩いの場所へ、ぜひ足を運んでみてはいかがですか♪

住所/宮崎県宮崎市跡江1380-9
電話番号/0985-48-2668
Instagram/@andersen_flower

 

【レポート】育種家 川越ROKAさんを訪ねて[前編]

2023.05.01

よっしー yoshi


ハナモミジ / 編集・オンラインショップ【好きな食べ物】いちご、モンブラン、韓国料理【趣味】BTS
top