ハナモミジ

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【コラム】二十四節気と花のある暮らし「芒種」

先日祖母が99歳の白寿を迎えた。誕生日を迎えた頃、祖母は腸ヘルニアを患いすぐに入院。そしてこの歳で開腹手術をすることになってしまった。福岡出張の際に私は入院中の祖母に会いに行くことができた。祖母は病院のベッドで口を開けながら寝ていた。肩を叩いて「おばあちゃん」と耳元で大きな声で呼ぶと目を開けてくれた。「来てくれたとね」と喜びながらも身体はキツイようで話の途中でふっと眠ってしまう。

99歳で手術をするってどれだけ体に負担がかかるのか。細胞はどれだけ頑張ってまだ生きようとしてくれるのか、経験したことがない全く未知の世界だった。

そんな中「心配かけてごめんね」と祖母は私に声をかけてきた。その一言を聞いて、祖母は本当に我慢強い人だったんだなと確信した。家族に迷惑をかけないよう、そしていつも仏壇に手を合わせながら家族の幸せを願ってきた祖母である。


※写真: おばあちゃんのお庭にあった、こぼれタネでどんどん増えるムシトリナデシコ。

私は小さな頃からおばあちゃんっ子で、働く母の代わりに祖母が食事を作ってくれたり一緒にお風呂に入ってくれることも多かった。幼少期に祖母が住んでいた小さな古い平家の一軒屋があって、そこには大きな渋柿の木と祖母が増やしたたくさんの植物が入り混じる庭があった。外に干した洗濯を取り込む時や、お庭の様子を見に行く祖母の隣でいろんな花を見て触ってきた。祖母は小さな私に丁寧に色々なことを教えてくれた。

フリージアが白より黄色の方が香りが強いこと、矢車草は花が終わる頃にタネを揉んで蒔いておけば来年もたくさんの花を咲かせること。高い枝に成った柿の実を取る竹の棒の使い方。お花のことから、生活の知恵まで生きる感動と工夫をする楽しさを祖母は教えてくれた。 花や自然が大好きな私のルーツはそんな祖母との思い出にある。たくさんの植物が入り混じって水彩画のような調和を奏でる野原のような庭。季節の移ろいとともに、私も祖母もたくさんの歳を重ね「私」というストーリーを重ねてゆく。

来週もまたおばあちゃんに会いにいこう。


小森妙華

2023.06.12

小森 妙華 komori myoka


アトリエ華もみじ代表【好きな食べ物】 餃子とビール【趣味】料理・写真・畑
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