生産者訪問@はざま園芸さん
福岡県の最西部の糸島半島に位置し、北は玄界灘、南は脊振山と豊かな自然に囲まれた糸島市。
その恵まれた環境からエビ、イカ、ホタテなどの海産物をはじめ、ブルーベリーやキウイフルーツなど果物も有名。近年では全国的にも人気の観光都市となり、その話題を耳にしたこともあるでしょう。
そんな糸島市において、およそ54年ほど前から観葉植物の生産をされているはざま園芸さんを訪ねてきました。
訪れたのは、8月の上旬。
「ハウスの中はめちゃくちゃ暑いので覚悟してきてください。」
そう事前に伝えられ、帽子にアームカバー、首にはカチカチに冷やしたクールリングの重装備でやってきました。今回はフラワーショップいなとめのとめさんと一緒に訪問です。
▲代表の波左間拓也さん。農場内をご案内いただきました。
昭和44(1969)年に観葉植物の生産を始めたはざま園芸さん。当時は、糸島市の二見ヶ浦という今や人気の絶景サンセットスポットとなっている場所にハウスを構えていましたが、昭和52年(1977年)にこの農場へ移転されたといいます。
「糸島には昔もっと農家さんがたくさんあったんだけどね。」とは、とめさんの話。年月が経つにつれやむなく生業を辞めていく農家さんが増える一方、はざま園芸さんは世代交代をしながら今日まで続けて来られました。
ハウスに足を踏み入れると、目の前には数えきれないほどの観葉植物が広がっていました!
よほど覚悟をしてきたせいかそれほど暑苦しさは感じることはなく一安心。ただ、ハウスの中が思っていたより薄暗い。
聞くと、観葉植物にとっては何よりも強すぎる真夏の日差しが天敵。下手したら葉焼けしてしまうので、夏の間は天井にシートを被せて光を弱くしているそうです。
ならば冬はちょうどいいのでは?
しかし実際は日本海に面した厳しい気候。冬は曇天が多く日照時間が少ないため、むしろ太平洋側に位置する農家さんよりハウス内を温める必要があるのだそうです。
棚の下に長〜く張られているパイプ。
このパイプの中にボイラーで沸かしたお湯を通わせて暖房に。冬場はハウス内が23〜24度に保たれるといいます。徹底した温度管理が必要なんですね。
▲南国を思わせるココヤシもいました!
ところで皆さん、こちらの植物をご存知ですか?
そう、はざま園芸さんオリジナルの「ディフェンバキア・クールビューティー」。
▲ディフェンバキア・クールビューティー
まるで水彩画のような素敵な葉模様。グリーンのグラデーションと斑の入り方がなんとも美しくて見惚れてしまいます。
▲ディフェンバキア・カミーラ
クールビューティーは「カミーラ」からの枝変わり種で、国内で生産されているのははざま園芸さんだけなんです。
カミーラから枝変わりして白斑の綺麗なものだけを選抜し増やすを繰り返し、8〜10年ほどの努力の末にクールビューティーが生まれたというわけですね。
▲クールビューティーの親木
背景を知るとより一層興味と愛情が湧きますね。ぜひ皆さんにも、はざま園芸さんのクールビューティーをお手に取っていただきたいです。
およそ3500坪ほどの敷地に建つハウスで育てられている植物は、波左間さんでも数えきれないくらいのたくさんの数。全てをご紹介しては皆さんの気力ももたないと思うので(笑)印象に残ったハウスをもうひとつだけ。
こちらのハウスには豪華なコチョウランが所狭しと並んでおり(みな太陽の方を向いています)たくさんのスタッフさんが発送の準備に追われていました。
こちらは5本の立派なコチョウランを大きな鉢に仕立てるスタッフさん。ひと鉢完成させるにはおよそ30分ほど。まさに職人技です!
糸島市では新盆(初盆)の家に鉢花を贈る習慣があるそうで、訪れたこの日はちょうど繁忙期の真っ只中。受け取った人にもきっと職人さんの想いがランに乗って伝わるでしょうね。
さて、今回取材をする中で一番驚きだったことは、波左間さんご本人が新品種の発掘や勉強のために海外へ頻繁に足を運ばれていることでした。
またオリジナル新品種のネーミングにおいても、海外に苗が出ていくことを想定して付けられているそうで、例えば「クールビューティー」という名前が国内ではいい名前であったとしても、他の国ではあまり良くない意味だったりする。そのため、ネーミングも海外を見据えて慎重にされているとお話しをされていました。
この時代では当然のことなのかもしれませんが、想像すらしていなかっただけにとても新鮮で。思えば私たちが日々新しい品種に出会えて楽しみが尽きないのも、波左間さんはじめ園芸業界を盛り上げようと奮闘されている皆さんのおかげなんですよね。それがわかっただけでも良かったですし、苗ひとつひとつにありがたみをより感じられそうです。
最後に皆で集合写真を撮らせていただきました!素敵なご縁に感謝です。
取材にご協力してくださったはざま園芸の皆さん、どうもありがとうございました。
▲今にも雷雨がやってくるよ〜とゴロゴロ鳴り出す灰色の空。この直後、強烈な雷雨に打たれながら農場を後にしました。
(編集部 よっしー)
はざま園芸
インスタグラム @hazamaengei_plants_orchid
ホームページ http://hazamaengei.com/はざま園芸さんでは、使い終わったエンジンオイルなどの廃油を再利用して冬場の暖房燃料として活用されています。
波左間さんのお話によると、重油ではなくて廃油の方が硫黄分がない分ボイラーの釜が痛みにくいとのことでした。自然環境にも優しくエコな取り組みですね。