ハナモミジ

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生産者訪問@吉村農園さん

先日宮崎のアナーセンさんで開催中の「第16回 個人育種パンジー・ビオラ作品展」に訪れたその足で、同じ宮崎市内にハウスを構える吉村農園さんにお邪魔してきました。

 

吉村農園の代表を務める吉村龍典さん。先日36歳のお誕生日を迎えた、宮崎ビオラそして日本のパンジー・ビオラ界を牽引する若手育種家のひとりです。

パンジー・ビオラ作品展では、首を長〜くして私たちを迎えてくれたビオラがとても印象的でしたが、ビオラの出荷が落ち着いたこの時期は、ハウスで来期に備える親株たちを見ることができました。

【レポート】「第16回 個人育種パンジー・ビオラ作品展」

 

今回の取材では、吉村さんのお話を通して育種における課題や見据える未来を垣間見ることができました。吉村さんが育てる“宮崎ビオラ”のご紹介とあわせてお伝えできたらと思います。

 

 

吉村農園のご紹介

宮崎ビオラのほか、カーネーションや造園、植栽関係の仕事を幅広く手掛ける吉村さん。メインのハウスでは今まさに、2万ポットものカーネーションの植え替え時期。ということで、今回はサブのハウスに避難していた宮崎ビオラの親株たちと対面してきました。

 

吉村農園では、元々先代のお父様が観葉植物をメインに育てられていましたが、途中からお花の生産に切り替え、龍典さんの代に。それからパンジー・ビオラの育種に力を入れていたアイディアルフラワーの大牟田さんたちの影響もあり、“宮崎ビオラ”の世界に魅了され、本格的に生産を手掛けるようになったといいます。

「親父が一回心筋梗塞を起こしたのもひとつ大きいきっかけで。年間40万ポットくらい作っていたので、それを一人でやるのは不可能だと思って。多少経費が上がっても、苗の品質を上げることで1ポットあたりの単価を上げる。綺麗に作って出すことによって評価される方向に舵を切ったことは、間違っていなかったと思いますね。」

 

吉村農園のビオラたち

およそ15年にわたって、苗の品質を上げるために改良を続けてきた吉村さん。今ではパンジー・ビオラ界でも期待の星である吉村さんが生み出す、宮崎ビオラの主力陣をご紹介します。

 

ブローインフィールド

吉村農園の代名詞でもある『ブローインフィールド』。派手さはないけれど、そのシンプルな清々しさが魅力。植栽にも向いており、今後は切り花としての使い勝手の良さを伸ばしていこうと奮闘中!風にゆらゆら揺れる花首の長さと硬さが絶妙なバランスだが、今後は選抜を繰り返すことでバリエーションの幅を増やしていく。

 

君待ちシリーズ

川越ROKAさん監修のもとで新しく育種された、花首の長い品種。ROKAさんが命名した『君待ち』という名には、“首を長くして君を待っている”といった意味が込められている。

「独特すぎて最初はしっくりきていなかったんですよ。もっとかっこいい名前が付くもんだろうなって思っていたんですけど日本語で(笑)。今となっては自分の中でもしっくりきていますけどね。ある意味インパクトがあるなって。」と、吉村さん。

 

君待ちシリーズには、石川園芸さんの育種ビオラ『レディ』の血を入れた『君待ちレディ』も登場。

 

こちらの品種は今年から出現した『君待ち小春』。まだ方向性が決まっていないため『君待ち』シリーズの中に入れるのか『君待ち小春』として出すのか検討中。今後絞りの強い品種の血を入れることで、より絞りが濃く重なっていく形にしていく。

 

カナリープランタン

元々『カナリア』を使っているタイプなので香りがとても良い品種だったが、改良により少し香りの遺伝子が弱くなったため、もう一度原種のカナリアを入れて本来の香りを取り戻す計画。

 

プリンセスKEIKO

先日の展示会にも出展されていた静岡県の個人育種家、落合けいこさんが作り出した八重咲きパンジーの種を吉村さんが育てた『プリンセスKEIKO』。ただただ美しい。

華もみじでは今季から吉村さんのビオラ「カナリープランタン」「プリンセスKEIKO」の仕入れを始めました。入荷早々、大変人気だったため、お目にかかれない方もいらっしゃったかも!?

 

 

『君待ち』の誕生から見る、生みの苦しみ

「育種で一番苦労したことは、別の“何か”と言われるところ。それを探すことがものすごく難しかったですね。」

“出したもん勝ち”のように次々と新しいものが出来上がっている昨今。吉村さんも新しい商品はいくらでも作れていたけれど、これは誰々さんのところのビオラに近いよねと言われてしまう状況で。本当に突出した特徴がなければ生き残れない。

色といえば大牟田さんの『エボルベ』、フリルや可愛いらしさといえば石川さんの『レディ』があって。じゃあ自分はどこを目指せばいいんだ?というところが一番難しかったといいます。

 

「ならば別の視点でと考えた時にこの“ステムの長さ”に行き着いて、そこからは早かったですね。『君待ち』ができて、じゃぁ今度は色を付けよう、今度はフリルを付けよう、今度は形を変えてみようってところにいけました。」

吉村さんが想像する、お客様に喜んでいただけるものを追求する中で、多くの挑戦と失敗を乗り越えてきたのだろうと察します。それは、吉村さんの情熱や努力によって克服されたものであって、吉村さんだからこその特別な色と価値をもたらしたのだろうと感じました。

 

宮崎ビオラの可能性を信じて

「茨城の小さな花屋さんがSNSを通じて吉村農園の商品を知って仕入れてくれたんですけど、「新しくていいものを仕入れたら、私たちのような弱小の花屋さんでもお客様って来てくれるんだなっていうのを教えてくれた花です!」と言ってくれて。」

SNSで繋がったお客様からの言葉を嬉しそうに話してくださいました。

近年、SNSの発達もあって、ブリコラージュやいろんな世界で需要が増え、ワンランク上のもの、もっと映えるものを求めてもらえる状況になりつつあるようで。

「自分たちだけじゃ本当に成し得なかった世界を花屋さんをはじめいろんな方々が作ってくれたからこそ、この市場がある意味賑わってきたと感じています。」

 

お客様の嗜好性も変化してきた。だからこそ、まずは吉村農園のコンセプトや苗を好きと言ってくれる人たちに喜んでいただけるようにしっかりとした苗を送る。そこから広げていけるように努力したいという強い想いを感じました。

 

 

最後にこちらまだ未公開のものをひとつ。

先日、吉村さんのハウスで「萼羽(ガクバネ)」という、ガクが全て花びらに変化したタイプの子が突然変異で出たのだとか。5枚全てが花びらになるものは初だそうです!

吉村さんの情熱が未来に繋がっていくことを願い、
今後の宮崎ビオラの可能性にも期待したいですね。

(編集部 よっしー)

 

吉村農園

インスタグラム @bf.t_y0sh1mura

 

 

2024.02.26

よっしー yoshi


ハナモミジ / 編集・オンラインショップ【好きな食べ物】いちご、モンブラン、韓国料理【趣味】BTS
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