【ディプロマ便り】底なし沼のしあわせ
突然出逢ってしまったあの日から
一気にハマって沼に落ち
知れば知るほどに
やればやるほどに
どっぷり浸かって抜け出せない
あ、K-POPアイドルにハマってしまった私の話をしているのではありません。笑
ブリコラージュフラワーにハマってしまった方の話。華もみじにいるとよく聞こえてくるのです。
今回取材をさせていただいたこちらの方も、ブリコラージュ沼から抜け出せなくなったひとり。
「ブリコラージュフラワーは、自由であればあるほどよい作品ができる魅力と魔力に満ちた底なし沼の恐ろしい世界。なんてね。」
ディプロマ卒業生の楢﨑佳子さん。
みんなから「ならたん」の愛称で親しまれている楢﨑さんは、常に周りへの気遣いを忘れず、いつでも明るくその場を和ませてくれる存在です。
昔から植物が好きだった楢﨑さんは、ある時なんとか流のいけばなを習いはじめたそうですが、先生に「あなた、いけばなに向いていない。」と言われてしまったのだとか。
しかしそれから暫くしてブリコラージュフラワーに出逢い、沼に落ちます。
「ブリコラージュフラワーは自由であればあるほどよい作品ができるし、キチンと型にハマらない感じの自分に合っていた。」
楢﨑さんのインスタグラムでは、日頃からご自宅でブリコラージュフラワーを楽しんでいる様子が伝わってきます。
「ひとり展覧会をやっているから見においで!」
そう言って、本格的な春が近づく3月のはじめ、華もみじスタッフを福岡県糸島市にあるご自宅へ招待してくれました。
結婚を機に旦那さんの地元、糸島へ移住してきた楢﨑さん。
今でこそ糸島は “住みたいまちランキング” で上位に入るほど人気のエリアになっていますが、20年ほど前は何もなかった。
「えらいとこに連れてこられた。」と当時を振り返ります。
そんな糸島に建つ楢﨑家。半分がご自宅、半分が旦那さんの営む外構屋さんです。
糸島へ移住してきたタイミングで開業した外構屋さん。何の後ろ盾もなくはじめたこともあり、当時楢﨑さんは乳飲み子を抱えながらも会社の経理や資金繰りに日夜奮闘したと言います。
あれから20年。今では楢﨑さん自身もお庭の設計士として旦那さんを支えています。
▲血気盛んなワンちゃんたち(写真左から次男のsky、三男のぷりん、長男のcoco)
ご自宅では旦那さん、ふたりの息子さん、3匹のワンちゃんと共に賑やかに暮らしています。
広々としたお庭に落ち着いた雰囲気の木造の建物。聞けばこの素敵なご自宅、楢﨑さんが自ら設計した御殿でした✨
「会社も軌道にのってきたある時、なんの知識もないのに自分で家が作りたいと思って。家の図面を描いてこれにしてください!って建ててもらったっちゃけど、それでなんでもできると思ったの。」
方眼用紙に間取り図を描いて、基礎も壁も自分で。
「すべては勢いたい!」
植物が枯れない家
自分で設計して建てた家。
いったいどんな家なんだろうとワクワクしながらお邪魔すると、そこはゆったり羽を伸ばしたくなるような、澄んだ空間でした。
お部屋の中にはさまざまな器に植えられたグリーンがあちらこちらに。
漆黒の高級グッピーもグリーンに囲まれて気持ちよさそう。
息子さんが飼いはじめたけれど、ベビーが増えたからとお母さんが育成係に任命されたのだとか。笑
「なかなか枯れんとよ。特に何もしてないんだけどね〜」植物にもいい環境みたい。
幾度となく葉を落としてはまた新しい芽を生やしてきた痕跡が!
あの子もこの子も「この場所が心地よか~」と言っているかのよう。
図面が自前ならキッチンタイルも自前!
他にも随所随所ににこだわりが見られる愛の詰まった家。息子さんが喘息もちだからと、珪藻土を塗った壁がこの家一番のこだわり。
外に出ると、まさに絵に描いたような理想的なお庭が✨
ブリコラージュフラワー×ワンちゃん の組み合わせってやっぱり最強だ。
言葉はいらない。写真だけで伝わるぬくもり。
愛のある落書き。タイルのつなぎ目に描かれたニコちゃんマーク☺
新しい芽が出てきた!
お庭のちょっとしたところに、つくしがヒョコッと顔を出していたり
しれっとこうべを垂らしたクリスマスローズが咲く姿が粋でした。
ブリコラージュ沼にハマる人の心理
楢﨑さん家のひとり展覧会をひと通り見せていただいたところでこう思った。
「うん、この方は確実にブリコラージュ沼にハマっている。」
ならば、ブリコラージュ沼にハマる人の心理とはいったいどんなものだろう。
自分なりに分析してみることに。
華もみじのディプロマレッスンにおいて考えてみると、キーになるのは「仲間」だ。
ディプロマレッスンはブリコラージュフラワーを楽しむだけでなく、しっかりとした寄せ植え技術を身につけるための場。そして自分の好きな花を寄せ集めて、自分にしかできないブリコラージュフラワーを作ることを大事にしている。
さまざまな思いを持ちながらも、ブリコラージュフラワーへの志を共にする仲間たちと、月に1度顔を合わせて同じ課題に取り組み、作品を披露したり、SNSに投稿する。それに対して仲間が褒めてくれたり励まし合うことで、また次も頑張ろうと気持ちが湧いてくる。
ひとりだと難しいけれど、例えばSNSで「こんな作品を作ったよ」と報告すると、それを見た仲間から何らかの反応があって、他の仲間も「あの人もこんなに頑張っているから私も頑張ろう」という気持ちになる。
励まし合うことで、ひとりで取り組むよりも何倍も力が湧くし、作品に取り組んだ時によい反応をもらえると嬉しさもあり、さらにハマっていく。
そしてもう一つ重要なポイントは、華もみじの生徒さんはみな優しい。普段レッスンの様子を見ていると、かける言葉があたたかい。お互いがあたたかい言葉を掛け合うと正の連鎖が生まれているように見える。
なるほど、人はこうやってブリコラージュフラワーにハマっていくのか。
そして楢﨑さんが言っていた、「自由であればあるほどよい作品ができる」。小森先生は、自分自身が好きな植物や色合い、どんなものを作りたいかを一番大事にしているので、型にはまった植え方を教えることはしない。だからこそ自分らしい作品が作れるようになってくる。
これが相まって、ブリコラージュ沼から抜け出せなくなるというわけか。ブリコラージュ沼にハマった人にしかわからないしあわせがそこにはある。
「魅力と魔力に満ちた底なし沼の恐ろしい世界」ぜひたくさんの人に味わっていただきたい。
と、ついつい分析に熱が入ってしまいましたので戻ります。笑
現状維持でしあわせ。
これほどまでに植物に愛情を注ぎ、お庭の設計もできる楢﨑さん。
そこから先のお花の仕事は考えているのかお聞きしたところ、意外にもこんな答えが返ってきました。
「今のこのスタイルに満足しているからね。みんな夢は?って言ったりするじゃない。夢とか何もない。現状維持でしあわせ。」
もともとブリコラージュフラワーをはじめたきっかけも、「自分の逃げ場がほしかったから」。
花と花好きの人が集まって、花のことしか考えない華もみじでの時間とその空間は、今でも楢﨑さんを支えてくれていると言います。
ブリコラージュフラワーをライフスタイルにどう取り入れるのか、
ディプロマレッスンで学んだことをその先どう活かしていくのか、
そんなに難しく考えなくていい。
大事なことは、それによって自分がいかに自分らしく生きられるか。
誰しも好きなことってひとつではないのだから、
たとえそれがブリコラージュフラワーじゃなかったとしても、好きなことに向き合えば向き合った分だけ、沼にハマればハマった分だけ、自分の支えになるし、輝かせてくれるのだと思う。
楢﨑さんの取材を通して、そんなことを感じました。
これからも底なし沼のしあわせを一緒に感じていけたらしあわせです。
(つうしん部 よっしー)