【ディプロマ便り】ふたりでひとつ
友達がいるって心強い。それが長年の気心知れた人ならば尚更のこと。
一方で、仕事となるとそれがむしろ足かせになったりしないものだろうか。
しかしそんな邪念も、タイトルにある “ふたり” によってどこかへ消え去った今回の取材。
福岡から片道およそ3時間半。おみせ部みきさんと車でひたすら九州本土を南下し、西郷どんの故郷としても知られる鹿児島の地に “ふたり” を訪ねてきました。
華もみじを鹿児島に
訪れた先は鹿児島市内の中心部から山あいに向かうこと15分ほどの場所にある、アトリエプランチュールさん。この日もまたあいにくのお天気で万年取り憑く竜神様を恨みつつ、ふたりに再会できた喜びを噛み締めました。
「“華もみじを鹿児島に” が最初の目標だった。華もみじの鹿児島店を作りたいねって。」
今回初訪問となる私たちにそんな話をしながら招き入れてくださった、オーナーの大久保裕子さん(写真右)と店長の岩元泰子さん(写真左)。華もみじディプロマコースを卒業し、2021年10月31日ハロウィーンの日にブリコラージュフラワーのお店をはじめられました。
実はオーナーの大久保さんはアトリエプランチュールを立ち上げる以前から、市内の中心部で「フラワーショップ花邑(はなむら)」を経営されてきました。
ある時、同業者勉強会に参加したことがきっかけでインディーズ時代の小森先生を知った大久保さん。先生の生き方に惚れ込み、花邑で一緒に働きはじめた岩元さんを誘ってふたりで華もみじのディプロマレッスンに申し込んだと言います。
ーー(大久保さん)ブリコラージュフラワーを花屋さんでももっと取り入れたらいいのになって。そしたらもうちょっと広まるのになって。
ふたりが華もみじに通いはじめた時期はちょうどコロナウイルス蔓延の真っ只中。往復7時間の距離を月に1回1年間。なかなかハードだったけれど、ふたりで行けたから楽しかったと話します。
聞くと大久保さんは20代の頃、花に関わる仕事に就くも一度離れてしまったのだとか。けれどやっぱり諦めきれず、決心して勤務後の時間を使いアレンジや生花を学び直しました。また、その頃異業種で働いていた旦那さんを誘い込み本格的な花屋へ修行に行ってもらったそうです。
勉強に修行、売り込みと夫婦で3年以上の月日を費やし、ようやく念願のお店を出すことができました。
ーー(大久保さん)うちもやっぱり順風満帆じゃなかったので。そんなこんなが小森先生の最初の頃と重なって。先生も一人で色々試行錯誤して、1万円で花苗を買ってそれが売れたらまたそれを元にしてって… 私と規模は全然違うんですけど。
だからなんか追わずにはいられなかった。どんな考え方をしているんだろう、どういう風にお花と向き合っているんだろうってすごく興味があった。
ーー(大久保さん)ブリコラージュフラワーが広まるのは3年後ですかね、鹿児島は。何でも来るのが遅いから。
嬉しいご来客
まるで森の中にひっそり佇むような環境が、雨のせいか余計に静かに感じられました。穏やかなひととき…
すると、誰かがひょっこりと扉を開けて入ってきました。
ふたりの昔からのマブダチである折田真由美さん(青いシャツの方)と、マブダチ感満載のアトリエプランチュールお客様第一号の池田歩美さん(赤いニットの方)。一瞬にしてその場が賑やかなお茶会へと変わりました。
あろうことか折田さん、訳あって入院していた病院を退院したその足でいらっしゃったようで。まさかのまさか、この日我々が取材に伺うと聞きつけ退院日を早めてくださったと言うではありませんか!退院直後とは思えぬトークで、腹の底から大いに笑わせていただきました。
と、そんな折田さんと池田さんへアトリエプランチュールはおふたりにとってどんな場所か聞いてみました。
ーー(折田さん)ここに来るのが生き甲斐で。入院する前までは何もないのにここに来て、日曜は朝から晩までここにいるのが日課でした。だってないもんね、こういう場所。プランチュールは親しみやすいからみんなが集まる。
ーー(池田さん)ありきたりだけど癒し。お友達のお家に遊びに来る感じでレッスンに来てるかな。すごい楽しい。それにふたりがずっと友達でこうやっているのは、すっごく素敵だなと思って。憧れです。
40年の絆
大久保さんと岩元さんの出会いは高校1年生に遡ります。同じクラスで同じ放送部、進学した短大は違えど新卒入社した先がまたまた一緒。偶然が重なりました。
その後、お互い会社を辞めてしばらく期間が空いたものの、大久保さんが花邑を構えた場所がたまたま岩元さんが子供を通わす小学校の近くだったこともあり再会したそうです。
ーー(大久保さん)岩元さんをスタッフとしてスカウトしました。お花のことに関してまっさらだったし、どんどん吸収してくれそうな感じだったから。それに岩元さんは高校生の時すごく縫い物が上手で、色合わせとかセンスもあっておしゃれな子だったからお花にぴったりじゃないかなって。
でも声をかけるのも誰でも彼でもってわけでなくて、絶対と思う人にしか声をかけないから。だからやっぱり正しかったと思います、自分の目は。
こんなにも特定の人とここぞのタイミングで再会するのも強運だけれど、それを逃さなかった大久保さんはさすが!自分のしあわせは自分で掴みにいくという姿勢がいい方向へ向かわせる。そう感じました。
出会ってもうすぐ40年。お互い考えていることは口に出さなくても大体わかると言います。
ーー(大久保さん)いつもすごく助けてもらってますから。両親が亡くなった時も、身内には言えない部分も聞いてもらったりして乗り越えられた。
ーー(岩元さん)私はその話を聞いて、自分もまた次に順番が来たのでそれがまた勉強になったりして。
ーー(大久保さん)本当に居てもらったから乗り越えられて今があるのかなと思えて。両親は岩元さんのことをすごく信頼していて、父の最期の言葉が「大事にしろ。」って。その通りだなって。
ありがたいです。だからもうふたりでひとつ、みたいな感じで思っています。
今回お見えにならなかったけれど、花邑にはもう一人同級生が働いているそうで、その方は大久保さんと旦那さんのキューピットなんだとか。色々な縁があって今がある、ずっとこのベストメンバーでいきたいとの思いを語ってくれました。
ふたりの間に流れる穏やかな空気感はまるで長年連れ添った夫婦のよう。今回その理由がわかった気がします。
ーー(大久保さん)いつかは小森先生に鹿児島へ来てもらってレッスンをしてほしい。それが夢です。先生が来てくれるようなアトリエになったら嬉しいな。お呼びできるようになりたい。
いくら仲が良い友達といっても仕事となると関係性は変わってくるもの。そう思っていましたが、ふたりを見ていたらそんなケースばかりではないのかなと思えました。それはきっとお互いに信頼して尊重し合って、感謝の言葉を忘れないから。取材中も思いやりのある言葉がたくさん聞かれました。
ふたりとスタッフさん、お客様がいいバランスで成り立っているアトリエプランチュール。きっと次の夢も叶うはず!
(編集部 よっしー)
アトリエプランチュール information
アトリエプランチュールではお花の教室とお花関係の器や雑貨、植物などを販売しています。今回あいにくのお天気でしたので、ぜひお天気がいい日に足を運んでみてくださいね♪
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